スタッフより
杉並区のH様は、海外で駐在した期間が長いので、ヨーロッパの住宅事情
にも精通してらっしゃいます。先日日本の住宅の屋根修理をした際に
住んでおられたフランスでの屋根の高耐久性について話して下さいました。
実際H様のおっしゃるように、
長期耐久性を前提に日本の屋根を考えると、国際的には遅れていると認めざる
を得ない状況です。確かに日本の戸建て住宅の省エネ・設備機器は、ヨーロッパと
比べれば優れています。しかし、屋根構法ではヨーロッパが格段の優位性を持って
います。瓦・スレート・金属など、ほぼすべての屋根材で通気構法の採用が
規制化されているのです。しかも、屋根材を緊結する釘からのわずかな浸水
を防ぎ、通気層によって湿気を排出し、野地板の腐朽・劣化を防ぐ高耐久
構法が一般的なのです。すでに住宅の長寿命化を実現しているヨーロッパの優れた
技術を取り入れていくことは今後有効だと思います。
もちろん、気候の異なるヨーロッパの屋根構法をそのまま取り入れるわけにはいきま
せん。取り入れるには、屋根の形・勾配・向きと、雨水侵入による木材の
腐朽、通気・換気・小屋裏環境との関係について十分な検証が必要になります。
ヨーロッパの屋根の材工コストは、日本よりも格段に高いです。日本が住宅の長
寿命化を進めていくなら、これまで重視されていた初期コストよりも
「ライフサイクルコスト(LCC)」の視点から考えなければならないでしょう。
100年といった長期で、屋根の維持・管理・葺き替えを考慮したLCCでみると、
ヨーロッパの構法の方が安価なことがわかります。日本は、屋根の初期コストを優先
したために構法の改善が遅れたのです。屋根の耐久性向上のためには、
屋根材・防水材・野地板・垂木・棟木・桁など、天井から上の小屋裏空間
全体を「屋根システム」ととらえることが必要と考えています。