スタッフより
K様に設計図面をみせてもらったところ、図面上は建物の全周にわたり、外壁材と
破風板水切りの間に隙間を確保していました。しかし、実際には全周にわたって
隙間を密閉していたのです。一般に水切りを設置する際には板金職人が現場で
寸法を測って曲げる加工を施し、納めることが多いです。板金職人は雨漏りを
恐れるので、外壁材にピッタリ合うように施工しがちです。
そのため、現場監督が何ミリ隙間を開けること、と具体的な指示をしないと
密閉してしまうことが多いです。この住宅は屋根断熱を採用しているので、外壁通気
だけでなく屋根断熱の通気を確保することが必須です。それが板金職人に伝わって
いなかったのでしょう。
軒ゼロ住宅の片流れ屋根で、棟の破風板と外壁材の納まりを考える際には、防水と通気を
両立しなければなりません。これを実現するには、片流れ専用の換気部材や棟包み板金
を利用するのが確実です。この現場の改修にあたっては、弊社は換気部材の利用を
K様に提案しました。専用の換気部材を遣えば、唐草水切りを使用せずにすむので、
継ぎ目からの雨水浸入の心配はありません。換気部材をとおして外壁と屋根裏の
両方の通気を確保できます。
なお、今回のケースでは、軒先側の給気口では雨水の浸入リスクは小さいと考え、
破風板水切りの形状変更で対応することを提案しました。けらば側の排気口も
破風板水切りの形状変更で対応することにしました。
金属屋根材を採用した片流れ屋根の住宅では、棟からの浸水による雨漏り事故が
後を絶ちません。今回はその典型的なケースでした。