スタッフより
港区のT様は、ヨーロッパ駐在していたのですが、コロナ禍で
日本の家に帰ってきたそうです。先日自宅の屋根点検をした際に
以前住んでおられたフランスでの家屋についての話を伺いました。
フランスでは、築150年のものも珍しくなく、屋根もちゃんと機能しているそうです。
長期耐久性を前提に日本の屋根を考えると、国際的には遅れていると認めざる
を得ない状況です。確かに日本の戸建て住宅の省エネ・設備機器は、ヨーロッパと
比べれば優れています。しかし、屋根構法ではヨーロッパが格段の優位性を持って
います。瓦・スレート・金属など、ほぼすべての屋根材で通気構法の採用が
規制化されているのです。しかも、屋根材を緊結する釘からのわずかな浸水
を防ぎ、通気層によって湿気を排出し、野地板の腐朽・劣化を防ぐ高耐久
構法が一般的なのです。すでに住宅の長寿命化を実現しているヨーロッパの優れた
技術を取り入れていくことは今後有効だと思います。
もちろん、ヨーロッパは日本程には雨量が高くないので、そのまま技術を取り入れるわけ
にはいきません。
屋根の形・勾配・向きと、雨水侵入による木材の腐朽、通気・換気・小屋裏環境との
関係について十分な検証が必要になります。
ヨーロッパの屋根の材工コストは、日本よりも格段に高いです。日本が住宅の長
寿命化を進めていくなら、これまで重視されていた初期コストよりも
「ライフサイクルコスト(LCC)」の視点から考えなければならないでしょう。
100年といった長期で、屋根の維持・管理・葺き替えを考慮したLCCでみると、
ヨーロッパの構法の方が安価なことがわかります。日本は、屋根の初期コストを優先
したために構法の改善が遅れたのです。屋根の耐久性向上のためには、
屋根材・防水材・野地板・垂木・棟木・桁など、天井から上の小屋裏空間
全体を「屋根システム」ととらえることが大切でしょう。