スタッフより
雨漏り調査をする際、重視するポイントがあります。それは水切りの設置です。
雨仕舞への配慮が行き届いた設計者は、水切りの重要性をよく理解し、設置
すべき場所に適切な大きさや形状の水切りを設けています。
そのような住宅では、防水しの張り方やサッシの収め方など、ほかの雨仕舞も
しっかりしていることが多いです。つまり、水切りの設置は、雨仕舞の巧拙
を測る指標の一つと言えます。
外壁面やサッシを流れる雨水は、下端部に到達すると、底面に回り込む性質が
あります。それを防ぐために水が伝わってほしくない箇所の手前に水切りを
つけるのです。
世田谷区のI様のお宅は、築25年の木造住宅です。外壁の下端部に水切りを
接地していないため、散水試験を実施して雨がかりを再現すると、外壁の下端部
で水が回り込みます。回り込んだみずはコンクリートの表面に滞留します。
長期的にみれば、コンクリートの耐久性や美観に悪影響を及ぼしかねません。
そもそも、雨水はなぜ底面に回り込むのだろうか?重力が働くだけなら、
雨水は真下に落ちるはずです。底面に回り込むのは、何か別の力が働いている
ことを意味します。水には、重力や表面張力、界面張力、毛細管張力など様々な
力が働きます。このうち回り込みを引き起こすのは界面張力です。
液体が固体の表面に触れる箇所では、液体の分子と固体の分子に引き合う
力が働きます。これが界面張力の招待です、文字通り固体と液体の「境界面」
に働く張力で、日常生活でもよく見かける現象です。例えば水を容器に入れると容器の
壁面近くの水面が、界面張力によって壁に引き上げられるように変形します。
外壁の下端で雨水が底面に回り込むのも、外壁の底面と雨水の間に張力が働いているからです。
この回り込みをふせぐのが水切りの役割です。水切りを設けるには、2つの方法が
あります。1つは壁面や底面の形状自体を変えることです。もう一つは専用の水切り
部材を挿入することです。明日へ続きます。