スタッフより
ある世田谷区の住宅会社で、大都市圏向けの「軒ゼロ」デザイン
ばかりの住宅を分譲し、その半数以上で雨漏り事故が連続して発生した
ケースがありました。雨漏りを大量におこしたその住宅会社は、
その後倒産してしまいました。
問題を抱えた軒ゼロを標準仕様にすれば、雨漏り事故も「大量生産」
されます。それが地域での信頼を失墜させ、企業の敬遠基盤を揺るがすのです。
もちろん、軒ゼロ住宅を手掛けるすべての会社が事故を起こすわけでは
ありません。軒ゼロデザインの住宅ばかりを供給しても、ほとんど事故を
起こさない住宅会社も存在します。そういう会社は、社内で標準的な
設計ルールを確立し、適切に運用しているのではないでしょうか。
ただし、そうした住宅会社も安心は禁物です。10年以上の長期スパンで
考えればm防水材料は確実に劣化し、将来的な雨水侵入のリスクは
避けられません。防水材料の性能だけに依存せず、設計段階で、雨仕舞を考慮し、
軒や庇の寸法を確保するのが本来の姿でしょう。
それでも、やむをえず軒ゼロを採用する必要に迫られたとき、
どのような納まりとすればよいのか。JIOガイドブック「JIO防水施工要領」
のなかで、片流れ棟、軒、けらばの核部位について、具体的なイメージ参考図が
示されています。部位は違っても、基本的な考え方は共通です。
ポイントは3つあります。
まず、野地板の露出部分を金属板で覆うことです。また、壁面の透湿防水シートは、
小屋裏換気に支障がないところまで張り上げること。
そして、通気措置を施す場合には、防雨効果のある換気部材を取り付けること。
以上は、通常よりも材料費や労務費がかさみますが、軒ゼロの雨漏り発生率
が高い以上、リスク軽減の対策は不可欠でしょう。