スタッフより
棟やケラバ、軒先といった屋根の端部の在り方は、外観デザインを左右するのと
同時に、建物の防水性能にも大きく影響します。最近、軒や庇が全くない
あるいはほとんどない木造住宅を、ごく普通に見かけるようになりました。
外壁がそのまま屋根につながったすっきりした外観は建て主からの要望でしょう。
しかし、そうしたデザインの屋根と外壁の取り合い部には、漏水リスクが絶えず
付きまといます。
屋根の形状も、漏水リスクに影響します。屋根同士、あるいは屋根と外壁の取り合い部分が
多いほど、形状が複雑になり、防水施工の難易度も高くなります。
基本的にシンプルな屋根程漏水リスクは低いですが、敷地の条件や、建物内の
間取りのかんけいで、複雑にならざるを得ないことが多いです。それだけに、リスクの高さを
十分に考慮した設計と施工が求められます。
世田谷区のS様宅は、屋根の一部を切り欠いて、2層吹き抜けの中庭を設けていました。
外部からの視線を遮りつつ、自然光の入る開放的な内部空間を作れるのですが、
防水面では弱点となります。霧かいた部分の四隅は防水施工が難しく、
防水層の取り合い部分にピンホールが残りやすいからです。
強く吹き込む雨がわずかな隙間から侵入します。
世田谷区のO様のお宅は、片流れ屋根ですが、その場合の棟端部やケラバも漏水リスク
が高いです。この住宅では、ルーフバルコニーの出入り口に、片流れの屋根を
架けていました。外壁から数センチ外に屋根材を出していたものの、屋根と外壁の
防水層は連続していませんでした。そのために風邪で巻き上げられた雨が、板金の隙間やモルタル
外壁のひび割れから壁内に侵入しました。
雨水の進入を防ぐためには、軒を出して、外壁頂部に雨がかからないようにしたり、屋根と外壁の
防水層を連続させたりする工夫が必要です。